蔵人日誌 年1回だけ行う生酛造りの「もと擦り」

丹波蔵元たより
2022.07.12

こんにちは!蔵人の濱木です。
西山酒造場に入社して4年目になります。

蔵人の勤務時間は8:30~17:30なのですが、
その時間外も、麹菌や酵母は発酵するので、完全に放っておくわけにはいきません!

実は…、毎日蔵人1人が朝まで蔵に残って、麹や醪の発酵を管理します。
蔵人の中では、このことを「泊り」と呼んでいます。

先日の私の「泊り」時には、管理仕事の他に、小鼓のお酒で唯一の生酛(きもと)造りである『白蔵(びゃくぞう)』の「もと擦り」という作業を行っていました。

清酒造りでは大きなタンクで発酵させる前に、まずは小さな容器で清酒酵母をいっぱいに増やす酒母(=酛)を造ります。

その酒母は、乳酸という超すっぱい液体を直接入れ、酸性にすることで、他の微生物やカビが繁殖するのを防ぎます。
そうして、酸に強い清酒酵母だけを育てています。
この造り方は、現代で多く用いられていて、「速醸」といいます。
対して、「生酛」は江戸時代から続く伝統的な製法で、まずは乳酸菌を育てることで、乳酸を菌につくってもらい、酸性の環境にします。

生酛造り酒母の初日、お米が水を吸って、ふやけたごはんのように、ほとんど固体になるため、早く溶けるように、お米をすり潰す作業を行います。

この「もと擦り」作業は、いつもの速醸酒母では行わない、生酛だけの作業です。
年に1回、1人しかやらない珍しい作業で、私も今回初めて行うので、とても緊張します!

 

この撹拌機を使用して、お米をすり潰します。
先端が回転する攪拌機です。

さて、お米を投入してから約6時間後、夜21時に1番擦りスタートです。

撹拌機を酒母に入れて、恐る恐る、スイッチを入れると…

表面付近のお米が宙に舞って、なんと、お米の雨が降り注ぎました!
慌てて蓋をして、蓋の隙間から回すことで攪拌しました。(ドキドキ)

次第に、攪拌部分が表面から深くまで入っていき、安定していきました。

10分くらい攪拌を続けると、徐々に棒の周りが動き始めて、渦潮のようにお米が流れていました。

この後は、夜中の1時、5時と、2番擦り、3番擦りを行い、最終的には、かなりトロトロのクリーム状になりました。

現在、この『白蔵』の酒母発酵は無事完了しました!
そして大きなタンクへと移動し、次の段階、醪の発酵が始まったところです。

 

生酛造りは、多くの手間や時間がかかりますが、その分、色々な微生物の発酵が交わることによって、複雑な香り、濃厚な味のハーモニーが生まれます。

いつも以上に白蔵に関われたこともあって、今年はどんな『白蔵』になるのか、今からとっても楽しみです!

今年の『白蔵』は9月上旬発売予定です。
発売開始の際にはまた改めてお知らせいたします。

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